はじめに
Ø 「量子」とは、粒子と波の性質をあわせ持つもので、この性質を利用した量子コンピュータの研究開発が進みつつある(一部製品化)。完成すると、スーパーコンピュータの一億倍の速さを持つコンピュータが実現するといわれている。まだ時間はかかるものの、量子コンピュータが実用化し普及した場合には、かなりの社会的インパクトがあると考えられる。
Ø 一部製品化が始まった、量子コンピュータの世界市場、日本市場の市場規模を試算した。特化型が中心で、ここ数年は倍近い市場成長率となる。そして2021年以降に、市場は急速に拡大、2025年には、100億ドル規模となり、日本円換算では1兆円を突破すると予測される。
Ø 市場ではIBM、Google、Microsoft、Intel、NTT、Alibabaなどの大手IT企業や、D-WaveSystemsなどのスタートアップが積極的に開発製品化を進めており、テスト導入、無料のクラウドサービスによる需要開拓、共同研究、ソフト・アプリ開発などが進展している。中には無料で量子コンピュータ向けの開発者キットを提供、量子コンピューティングについての深い知識がなくても、量子コンピュータ向けアプリが開発できる(30量子ビット搭載量子コンピュータシミュレータ)システムを提供しているMicrosoftのような市場喚起へ向けた動きも出てきている。
Ø いっぽう、量子コンピュータ周辺領域でも、量子の特性を生かした、画期的な技術開発が創出されているのが注目される。
Ø たとえば、量子コンピュータではないが、量子現象に着想を得たデジタル回路を搭載する疑似的な量子コンピュータであるデジタルアニーラ(富士通)の場合は、組み合わせ最適化問題を得意とし、高速計算が可能、スーパーコンピュータ「京」をもってしても実に8億年の計算時間が必要となるケースが、1秒以内で計算できてしまうという。また、量子の性質を応用した探索アルゴリズムとして、連続値量子アニーリングという技術を創出したケース(デンソーと東北大学の共同研究)もある。これは、量子コンピュータそのものではなく、通常のPC でも使える新技術である。(将来的には組み込み型の可能性もあると考えられる。)
Ø このように、量子コンピュータ市場は、量子現象の特性を生かし、従来のコンピュータ技術との融和をはかりながら、市場のすそ野が拡大してゆく可能性が高い。事実、IBMでは、ハイブリッド方式によるシステム化を提案している。
Ø 量子コンピュータの開発製品化や、量子現象に着目した研究開発は、AIビジネス市場を、より発展させることにもつながっており、加速しつつある開発の今後の動向が注目される。
Ø 今回はビジネスの現場にいる一般企業の会社員、経営者(計2,100人)の量子コンピュータに対する意識調査を通して、量子コンピュータの市場、産業展望につながる分析をした。量子コンピュータのこれからの可能性、未来について意見を聞いたところ、量子コンピュータによる産業革命に期待する、など、明るい未来を感じさせる意見が多く寄せられた。
Ø 当調査報告書では、量子コンピュータのほか、ディープラーニング、AIビジネス市場などの市場規模予測も行い、量子コンピュータの可能性をとらえている。当調査報告書が皆様のビジネス開発、研究開発、製品サービス開発に少しでも寄与できれば幸いである。
AQU先端テクノロジー総研
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